
鹿児島県奄美群島出身のわが家では、先祖伝来の行事として、毎年1月2日の午前中に「大工道具祭り」を行っている。
先祖の霊をお招きし、これまで無事に過ごさせてもらったことに感謝の念を捧げるとともに「今年も無事に募らせるよう見守っていて下さい」とお願いし、共に正月を祝うというものである。
先祖が大工業を営んだわけではないが、男はだれでもノコギリ、かんな、カナヅチなどの刃物を必ず使うので、明治生まれの祖父母が、先祖から大工道具の象徴として曲尺(故郷の方言ではバジョガネという)を受け継いできて、大正2年生まれの父を経て、昭和19年生まれの私が受け継いでいる。
ところで、この行事は、これまでその意義など深く考えず、漫然と習慣的に行ってきた。このほど健康友の会の会員さんから借用した『聞き書 鹿児島の食事』を読んでいて奄美群島一帯での正月の恒例行事であること、また正月2日の午前中に先祖とともに新年を祝う行事として詳細に紹介されている記事をみて、その意義を知り奄美の大事な伝統行事であることを認識した次第である。もうしばらく続けようと思う。
ただ、齢80を超えた今となっては、関西生まれの息子に引き継ぐのは酷な気もするので、大工道具祭りは打ち止めにできないものかと悩み、墓じまいとともに我が家最大の懸念事項ではある。
西淀うちの支部 山口貞善
『聞き書 鹿児島の食事』より
大工の祝い
(奄美群島で行われている正月の行事)
▼大工の祝いの御膳
正月の2日は、みい仕事(新しい仕事)といって、畑に行って、当主の年の数だけそてつを植える。そのあと家に帰ってから大工の祝いをする。男はだれもが刃物を使うので、みんな大工の神をまつらなければならない。大工の神さまは床の間や、その横あたりに簡単な棚を設けてまつってあり、墨つぼや曲がり尺(バンジョガネ)などの大工道具を置き、毎朝線香や水などをあげている。大工の祝いの日には、高膳に墨つぼ、曲がり尺、かんな、かなづち、のこぎりをのせておいて、その前で三献する。ごちそうは元旦と同じものである。

『聞き書 鹿児島の食事』(社団法人農山漁村文化協会1989年12月5日発行)283ページより引用
