命は平等をかかげ「断らない」医療を実践します
2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界でも日本でも、私たちの生活様式を変え、価値観を変え、社会の在り方を問いだした1年半でした。第4波を迎えた大阪では最多の感染者数と死亡者数を更新し、医療体制が限界を超え通常医療がいよいよできなくなり、様々な場面で手遅れになるという事態に直面していました。
新型コロナ感染症対策本部を立ち上げ、学習を進める
西淀病院では、2020年1月末に急にサージカルマスクやN95マスク、アルコール消毒液など感染対策に必要な衛生材料が入らないという困難に直面しました。
異常事態と判断し、すぐに「新型コロナ感染症対策本部」を立ち上げました。同時に「当院で対応可能な疾患・病態であれば、断らず診療を行う」という方針を職員に通達し、全職員(受付委託会社職員含む)に対して接触飛沫感染対策の学習をすすめ、ICD(感染制御医師)によるCOVID-19の正しい知識と対応の学習会を開催しました。
職員の不安とストレスの増強と対応
2020年4月に入り、独歩で入院した初めての陽性者で呼吸状態が悪化し、人工呼吸器を装着して重症受け入れ病院へ転送をしました。また外来では遠方からの救急搬送など、搬送数が過去最高となり、外来到着と同時に人工呼吸器装着に至った患者も発生して、対応する職員の不安とストレスが増強しました。対策本部から「新型コロナウイルス感染症から私たちと地域の患者さんを守るために行うべき9つのこと」を発出し、連携病院の精神科医の協力、法人窓口のカウンセリングなどの対応をしました。
コロナ受け入れ病床届け出を
5月8日には、より厳密にゾーニング(コロナ感染患者の病原体によって汚染される区域と汚染されない区域を分ける)を行うため、陰圧テント外来を駐車場に設置し、法人内看護師の支援も受け診療を行いました。緊急事態宣言が明け感染が一定落ち着いた段階で、院内ゾーニングでの通常診療に戻しましたが、すぐに第2波が訪れ、病院外での発熱外来を現在も継続しています。そして大阪府からの要請に応えて、2021年2月3日よりコロナ受け入れ病床を届け出ました。
深まった地域医療連携
救急搬送依頼の増加に異常な変化を感じ、情報共有を目的に2020年3月19日に、西淀川区内の急性期2病院でコロナ対応の情報共有を行いました。その後、区医師会、区役所と新型コロナウイルス感染症西淀川区合同対策会議を開催しています。この連携により、2病院の発熱外来への区医師会の医師にも、出務協力をしていただき大変助かりました。
最大の第4波を迎え
変異株が中心となった「第4波の危険性」は、若年層でも重症化し亡くなる方がいる一方で、乖離した人々の行動(『慣れ』)のため人の移動が止まらないことでした。感染力が高く、重症化の速度は速く、発熱外来に自分で歩いて来た方が、病院に到着した頃には低酸素ですぐに人工呼吸が必要になったケースを何度か経験しています。本来入院が必要でも自宅療養せざる得ない方たちの中から死者を出したくないと、陽性者の中でも病状で気になる方へ健康確認をしようと法人内診療所とも連携をしています。
連携を強め「断らない」医療の継続を
区内対策会議は現在、他の2病院、区歯科医師会、区薬剤師会の参加もあり、医療機関対応とワクチン接種対応について会議をしています。西淀川区は、災害が起こった場合も孤立する可能性が極めて高い地域のため、行政も巻き込んだ日常的な地域連携が何より区民の命と生活を守ることにつながると確信しています。新型コロナウイルスはまだ収束していませんが、「断らない」医療の継続が、かけがえのない命を守ることに繋がるよう、今後も地域医療を支える一翼を担っていきます。
西淀病院看護部長 小玉裕加子