新聞や雑誌の川柳を声を出して読んで見ると、「これなら私も作れそうだ」「私ならこんな風に詠むのに」と思うかもしれませんね。最初に取り組む川柳は、そのようにわかりやすい川柳でいいのです。
たとえば、今月号の川柳の兼題は「今さら』です。千舟の敬子さんは「今さらと言えどしている白髪染め」と詠みました。年も年だから白髪が増えるのは当たり前、何を今さら白髪染めをするの?と強がりつつも、やっぱりちょっとは美しくなりたいという願いも捨てきれず、白髪染めをしていると詠っています。
相手の立場や気持ちを思いやり、配慮する考えが浸透している日本では、ストレートに本音で話すことを避ける傾向にあります。佃のカズエさんは「家出して今さら帰る勇気ない」と、帰りたいのにそういえないことを詠っています。こんな心の葛藤は日常茶飯事ですので、川柳のネタになりやすいです。
豊中市の英夫さんは「『好きでした』今さら言うな孫笑う」と詠い、欧米人なら「愛しているよ」と気軽に言い合うのに、日本人は好きでもストレートに言わず、そんなことはわかっているだろう、孫が聞いたら笑う、と詠っています。
川柳のネタはあなたの周りに一杯転がっています。ぜひ、この新聞の川柳欄にある「兼題」を見て投句してください。
加山 勝久(健康の友川柳選者)