コロナ禍のくらしを助けたフードバンク

地域での「連帯・協同」を更に強めていこう!

公益財団法人 淀川勤労者厚生協会 副理事長
西淀川フードバンク共同代表
長瀬 文雄

大変な世の中、今、「私たちになにかできることないやろか」

2年余に及ぶコロナウイルス感染症の蔓延は、私たちの暮らす社会のあり方を大きく変えました。コロナによる廃業、失業、倒産、人や社会との接触が絶たれたことによる孤立や孤独の増大、健康悪化が表出しました。病院や施設では家族との面会もできず、田舎の親にすら会えない状況が続きました。

こうした中、象徴的な出来事が一昨年末に大阪で相次いで起こりました。都会の真ん中で誰にも助けを求められず60代の母親と40代の娘が餓死し、胃の中にはなにもなく所持金も30円のみ。八尾、高石でも同様の事件が相次ぎました。

〝こんな人が私たちの周りにもいるんちゃうやろか〞〝私たちになんかできることないやろか〞そんな思いから始まったのが「西淀川フードバンク」です。

どうぞ、これ持って行って下さいね

区内のさまざまな団体も大歓迎!

第1回開催にむけ連合町会や社会福祉協議会、こども食堂関係者、外国人支援団体などを訪ね懇談しました。御幣島の西栄寺住職からは全面的に協力の申し出を受け会場の提供もいただきました。区内の企業や団体、個人にも趣旨を伝える中でカンパや物資の提供もいただきました。出来島では外国人支援に取り組んでいる団体からも、困っている子どもの世帯にぜひ広げたいと大歓迎されました。

フードバンクを通じ新たな連帯やつながりが

2021年1月28日を皮切りに始まった西淀川フードバンクはこれまで5回、のべ2千人を超える来場者がありました。この中で、住之江区からこられた男性は「コロナで失業し所持金も底をつき働きたいが仕事がない。お世話になるばかりでは申し訳ない」とボランテイアとして参加されました。来場者の多くは、もともと生活基盤がぜい弱なところにコロナ禍が直撃して一層困難に陥った人たちです。

また、常設会場となっている「生活と健康を守る会」と「健康友の会柏花センター」には、「人づてに聞いた」「ホームページを見た」と毎日来場者があり、生活に行き詰まっている方がこられ、無料低額診療や生活保護にもつなげています。

医師も基本セット渡しをやりました

この取り組みを通じて多くの団体、企業、組織、個人との連帯やつながりが生まれ、医師、弁護士ら専門家と自主的に参加していただくボランテイアの善意の力も感じました。

ランドセルや文房具など食べ物以外のものも要求に

地域の身近な人に声をかけようと健康友の会各支部が中心となって地域毎のフードバンクも始まり、これまでに5支部で約250人が来場されました。参加した人の多くはこれまで社会的な支援が届かず、生活に困窮され、孤立されていた方々です。

また、10月のフードバンクに提供されたランドセル24個のうち当日18個が引き取られ、文房具も沢山もって帰られました。写真に写った子どもの笑顔が忘れられません。さらに子ども用おむつや生理用品の要望が強いのも特徴的でした。

文房具やランドセルもどうぞ!

「連帯の心を届ける」取り組みを、更に強めよう!

私たちの取り組みは、困っている人に直接モノを届けていますが、困った時には誰だって〝助けて〞と言っていいんだよという〝連帯の心〞を届ける活動なのだと思っています。

「誰もが安心して住みつづけられるまちづくり」は1998年に提唱した民医連共同組織連絡会の一貫したスローガンで、この取り組みがその実践の一つだと思っています。

自己責任が声高に強調され、孤立・分断の社会にあって「連帯・協同」の取り組みがますます光輝いています。社会保障としての「公助」を求める運動とともに、地域になくてはならない組織として、淀協、健康友の会の役割はますます重要です。今年を「連帯・協同・社会変革」の年として大きく飛躍しましょう。

第6回西淀川フードバンク・食料無料市場

第6回西淀川フードバンク・食料無料市場

第6回西淀川フードバンク・食料無料市場(PDF)

日時:12月29日(水)11:30~13:30
    (品物がなくなり次第、終了します。)

場所:西栄寺
   大阪市西淀川区御幣島1-6-17
※駐車場はありません。

あたたかい ごはんの炊き出しがあります。

法律相談・健康相談・生活相談もあります。

主催:西淀川フードバンク実行委員会
(西淀川区社会保障推進協議会)
tel:06-6473-9914 / 06-6476-4511 / 06-6472-6453

子どもも大人も「ホッ」とできる居場所を

「こども食堂」は「こどもたちが安心して食事や遊びを楽しめる居場所を」と2017年から始まりました。2020年2月までは、月1回土曜日に姫島福祉会館に子どもたちやお母さんやお父さんが集まってみんなでお昼ご飯を食べる「こども食堂」を、2020年4月からは、「西淀川・淀川健康友の会はっぴぃひめじま支部はっぴぃハウス」(健康友の会たまり場)を会場に、毎月第2・4土曜日のお昼ご飯の「お弁当」や食料品・文具など無料で配布しています。

子どもたちのしんどさを何気なく聴く事が大切だと思っています。保護者の負担も、私が子育てしていた頃より大きく増えています。今、子どもも大人もちょっと「ホッ」とできる所が必要だと思います。

「こども食堂」の活動をお手伝い頂けるボランティアさん募集しています。(詳しくは事務局まで)また、財政不足が課題になっています。家庭で不用になった文具、食料品などの提供、「こども食堂」の「会員・賛助会員」も募集しています。
この秋、私たち大人が責任を持ってきちんと選挙に行くことが大事だと思います。棄権する事なくぜひ投票に行って頂くことを訴えます。

TOTTOひめじまこども食堂 與世田 利恵さん

いのちや一人ひとりが大切にされる社会を

西淀川食料無料市場(以下、フードバンク)は今年1月から6月の間で4回まで取り組み、のべ1700名の方が来場しました。2回目から来場者アンケートをとり、コロナ禍が暮らしを直撃し、多くの市民が助けを求めていることが鮮明になりました。

アンケート結果では、①若年層やとりわけひとり親世帯での困窮度合いが高いこと②先行きの見通しが立たず、精神的苦痛や不安を感じていること③低い年金のもと災害などで生活の糧が絶たれた時の生活(社会)保障制度の重要性が増していること④生活保護は本来、憲法で保障された国民の権利だが「身内に迷惑がかかる」と、大変ハードルが高く、生活に困った時に、誰もが利用できる生活保護制度などが求められているなど、今、人びとの暮らしの困難さが浮き彫りになっています。

コロナ禍による生活困窮者支援活動を通して、「助けて」と言えない時代に、これまでの枠を超えて、様々な団体・個人の新しい連帯・共同が広がっています。一人ひとりが大切にされる政治への転換をご一緒にすすめていきましょう。

西淀川フードバンク事務局長 園部 建史さん

第2回西淀川フードバンクに400人が参加

”助けて”といえる社会へ 地域での連帯を

コロナ危機の中、“助けてと言えない人に届けたい“との思いを胸に2月27日午後、第2回西淀川フードバンク(食料無料市場)が開かれました。雨の中開催された前回(1月24日)を大きく超える400人の方が参加されました。参加したボランティアは前日と合わせて100人以上に及びました。

当日は午後2時の開場を前に1時間前から100人以上が並ぶ長蛇の列。医師、MSW、弁護士による健康、生活、法律相談も行なわれ、今回は多くの方が相談に訪れていました。

参加した人からは「長引くコロナの影響で生活がいき詰まり途方に暮れていたが、こんなやさしさに触れ涙があふれた」「本国への仕送りで月3万円程度の生活の中で、ほんとうに命が救われる思い」などに声が次々と聞かれました。参加スタッフは「身近にこんなにたくさんの人たちが生活に困窮されているのかと驚きもし、“ありがとう”と言われ心が熱くなった」「ほんとうにやってよかった」などの感想を寄せられています。